Ⅴ.売買

(1)手付
 ・改正民法では、判例法理を明文化
→・買主による解除の場合は手付を放棄すること、
 ・売主による解除の場合は手付の倍額を現実に提供すること、及び解除の相手方が履行に着手していないこと(改正民法557条第1項)

(2)権利移転の対抗要件に係る売主の義務
 ・売主は、買主に対し、登記、登録その他の売買の目的である権利の移転についての対抗要件を備えさせる義務を負うことが明文化された(改正民法560条)

(3)買主の追完請求権、買主の代金減額請求権、買主の損害賠償請求及び解除権の行使
①契約の不適合
 ・現行民法における瑕疵担保責任は、売買の目的物に「隠れたる瑕疵」がある場合における解除権及び損害賠償請求権を規定する(現行民法570条、566条)
 ・改正民法では「隠れたる瑕疵」の概念は、目的物が「種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しない場合(改正民法562条第1項)という「契約不適合」の概念に置き換えられることになる。
→これは、ⅰ)売主が契約に基づき、契約内容に適する物を引き渡す義務があることを前提に、担保責任を債務不履行責任の一環として整理されたことによる。
 ⅱ)現行民法では権利の瑕疵として瑕疵担保責任とは別に規定されていた「数量」の不足は、改正民法では物の契約不適合に含めて取り扱われることになる。

②買主の請求権
 ・物の契約不適合が存する場合、買主には、
ⅰ)追完請求(修補・代物請求、不足分引渡請求、改正民法562条第1項)と代金減額請求(改正民法563条)が新たに規定。
ⅱ)債務不履行に基づく解除及び損害賠償請求が追加された。
ⅲ)追完請求と代金減額請求については、売主の帰責事由は求められていない(改正民法562条、563条)
ⅳ)解除と損害賠償請求の要件については、一般のルールに従う(改正民法564条)
→損害賠償請求については、売主の帰責事由が必要となる。
→買主に帰責事由がある場合には、
ⅰ)追完請求、代金減額請求は認められず、
ⅱ)解除についても同様(改正民法562第2項、563条第3項、564条、543条)
 ・買主の追完請求権(修補・代物請求、不足分引渡請求、改正民法562条第1項)は、どのような追完方法をとるのか
ⅰ)買主の選択にゆだねたうえ、
ⅱ)売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、
→買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる(改正民法562条1項ただし書き)
 ・買主の代金減額請求権について、
→買主が相当の期間内の履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完をがないときは、買主はその不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
→ただし、履行の追完が不能であるとき、売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に示したとき等については、直ちに代金の減額を請求できる(改正民法563条第1項、第2項)

③期間制限
 ・買主は、契約不適合を理由とする権利を行使するためには、目的物の不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知する必要がある(改正民法566条)。
但し、売主が引渡氏の時にその不適合を知り、または重大な過失によって知らなかったときはこの限りではない(同条ただし書き)
→現行法では1年以内に権利行使をする必要がある。
→ただし書きについては、現行民法では規定されなかった内容である。
 ・数量不足による契約不適合、権利に関する契約不適合の場合には、現行民法に規定されている1年間の期間制限は廃止されている。

④権利における契約不適合
 ・売主が買主に移転した権利の契約不適合については、物の契約不適合の場合の買主の救済手段が準用される(改正民法565条)