Ⅶ.賃貸借

(1)賃貸人たる地位の移転の明確化と地位の留保のための要件の新設
 ・賃貸借の目的物が譲渡された場合において、賃貸人たる地位が旧所有者から新所有者に移転するかどうか。
→現行民法化の判例:賃借人がその賃借権を第三者に対抗できる場合においては、賃貸目的物の譲受人であっても賃借人に対抗できないことから、
原則として賃貸人の地位が譲渡人(旧所有者)から譲受人(新所有者)に対して当然に移転するものとされている。
→改正民法:このルールが明文化された(605条の2第1項)
 ・賃貸目的物の譲渡人と譲受人の間において、
(ア)賃貸人の地位を譲渡人に留保する旨の合意を行い、かつ
(イ)譲受人を賃貸人とし、譲渡人を賃借人とする新たな賃貸借契約を締結すれば、
譲渡人(旧所有者)に賃貸人の地位を留保することが可能であるという新しいルールが定められた(同条第2項)。
 ・このような賃貸人の地位の留保が行われた場合、譲受人が賃貸人、譲渡人が賃借人(転貸人)、当初の賃借人が転借人という契約関係になります。
 ・譲受人と賃貸人の賃貸契約証書(上記(イ)の契約)が終了した場合には、譲受人(賃貸人)と当初の賃借人(転借人)との間の直接の賃貸借契約となる旨も定められた(同条第2項後段)

(2)敷金の承継
 ・賃貸人の地位が移転した場合には、敷金の返還義務について
→現行民法の判例:譲受人に承継される。
→改正民法:判例上のルールが明文化された(改正605条の2第4項)
 ・賃借人が賃借権を適法に譲渡したときには、
→改正民法:敷金返還請求権は新賃借人に引き継がれることなく、旧賃借人にて請求できる(改正民法622条の2第1項第2号参照)。

(3)原状回復義務の範囲の明確化
 ・現状回復義務の範囲に関して、いわゆる通常損耗や経年劣化によって生じた損傷については義務の範囲外であるという判例理論が明文化された(改正民法621条)