港区赤坂清和行政書士事務所,民法改正と不動産,賃貸借契約の連帯保証人,原状回復・敷金

Ⅺ.業界事例:民法改正と不動産

 不動産関係では、賃貸・売買の契約書の内容がこれまでとは異なっている。特に注記すべき点を挙げる。

1、賃貸借契約の連帯保証人

 連帯保証人には極度額(限度額)をあらかじめ示し、それらを含めて責任の範囲を書面に記載することになる。

次に、保証人の保護に関して、現行民法465条の2では、「個人貸金等根保証契約の保証人」の保護について規定していたが、同条の改正で、保証人を個人とする根保証契約一般に保護の規定が適用されることとなった。

例えば同条2項では、極度額を定めていないと保証契約は無効とされる。
ただし、あくまで個人が保証人となる場合の保護規定であるため、
法人が保証人となる場合は極度額を定めていなくても無効とはならない。

一方、売買契約関連では、現行の売主の「瑕疵担保責任」の規定がなくなり、
債務不履行責任の中での「売買の場合についての特則」として「契約不適合責任」が新たに規定された。また、買主の救済方法も多様化され、現行の契約解除と損害賠償に加え、
「追完請求権」と「代金減額請求権」が認められた。

この買主の「追完請求権」とは、契約した内容に適合していない場合、例えば補修や代替物の引き渡しで履行を補完することを請求できるものである。売主への責任追及が更にしやすくなる。

また、改正民法では、債権等の消滅時効について、「権利行使できる時から10年」に加え
「債権者が権利行使できることを知った時から5年」も認められる。

2、原状回復、敷金

・今回の民法改正は、1896年(明治29年)の制定時に作られた条文が、現代社会の情勢と合わなくなったために行われた。
賃貸借契約関連では、敷金の定義・敷金の返還義務・原状回復の負担割合などが法律に明記された。国土交通省や東京都が策定しているガイドラインに示した内容を改めて明文化した形となっている。契約書でも、これら内容を明記していくことが求められる。

・例えば、通常損耗や経年劣化については入居者が原状回復義務を負わないが、入居者が原状回復費用を全額負担する「通常損耗補修特約」等を付帯することは可能である。

ただし、「特約の有効性については範囲の特定が必要である」と言われている。
また、賃貸住宅の一部滅失に伴う賃料減額請求については、「滅失したときだけ」との従来の規定から幅を広げ、改正法では「滅失その他の理由によって使用できなくなった」場合に賃料が減額されるとなった。
つまり、現行法では賃借人が減額請求をしないと認められなかったのが「当然に減額される」となる。

また、滅失に伴う修繕について、賃借人に責任があって修繕が必要になった場合、
賃貸人に修繕義務がないことが条文に盛り込まれた。
また、賃借人に責任がない(賃貸人に修繕義務がある)にもかかわらず、
その修繕を賃貸人が行わないため、賃借人が行った場合、掛かった費用については、
もともとある「必要費の返還請求権」(民法608条)により対応することになる。

以上、概略であるが、不動産賃貸・売買において気づいた点をあげた。