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認知症と生前対策―財産管理契約

  認知症については、私たちにとって身近な症例であることを、前提にした立場でこのコーナーを進めています。生前対策も相続対策の一種なのです。争族にならないために、生前に禍根を残さないために、お元気なうちに考えておこうというものでした。なぜなら、認知症は決して、健康が害されるわけではないのです。私の知り合いの方でアルツハイマー型の認知症の初期症状があらわれている方がいますが、とても健康で、前向きに明るくしておられます。

 ここで、問題とするのは、今までの相続対策では、各対策が「亡くなった後」が基準の対策でした。たとえば、 

・遺産の分割対策としての遺言書

・認知症になってしまってからの法定後見

・亡くなってからの遺言執行

・次の世代に移ってからの二次相続対策 などです。

  私は、財産管理という、視点から法的対応を構築するのが自然のように見えます。よくこのようなケースの場合に、今までの相続対策との違いは?家族信託?では、どのようなことができるのか、理解する必要があります。現在考えられる主なものをあげます。 

①認知症対策

②資産の分割対策

③承継者対策

④管理上の不動産の共有解消

⑤障がい者対策

⑥ペット対策 などです。

 その他にもさまざまな対策に家族信託?を用いることができると、専門家が日々、研究をしています。大家さんにとっては、①から④に関する対策がメインになると考えられます。また、①から③の対策が人生100年時代に必要なる相続対策になります。

 生前対策も相続対策の一種なのです。争族にならないために、生前に禍根を残さないために、お元気なうちに考えておこうというものでした。

なぜなら、認知症は決して、健康が害されるわけではないのです。
私の知り合いの方でアルツハイマー型の認知症の初期症状があらわれている方がいますが、とても健康で、前向きに明るくしておられます。

しかし、認知症など判断能力が低下している場合には契約を結ぶことは出来ないのです。そこで、私は、認知症対策と財産管理こそが、生前対策のスタートラインではないかと思います。

生前事務委任契約

 通常、財産管理は、事務委任契約であり委任契約の一種です。生前事務委任契約の場合、できることが大きく2つに分けられます。 

生前事務委任契約は、ご自分の心身の機能の低下にそなえ、元気なうちに、信頼できる方に、様々な手続きの代行をしてもらうことをあらかじめお願いしておく契約です。

生前事務委任契約の内容の契約する内容は大きく分けて、「財産管理」と「療養看護」になります。

1.財産管理

 委任する方の財産を、委任する方の利益となるように管理・保存するものです。

・金融機関のお金の出し入れ

・家賃・地代・年金などの定期的な収入の受け取り

・家賃・地代・公共料金などの定期的な支出の支払い

・保険契約の締結や保険料の支払い及び保険金の請求

・住民票などの取得や税金の納付など行政機関の手続き

2.療養看護

医療や介護などの手続き全般を委任できます。

・病院や介護施設への入院・入所の手続き

・要介護認定の申請や介護サービス利用契約の手続き

・病院や介護施設等への費用の支払い

 

生前対策のタイミング

 

 認知症については、私たちにとって身近な症例であることを、前提にした立場でこのコーナーを進めています。言われていますのは70歳ごろを目安に考えています。

 早いのでは?と思う人も多いですが、生前対策は元気なうちに始めるのがよいです。
生前対策と一口でいっても家族信託、遺言、生前贈与など様々な種類のものがあります。
それぞれのメリット・デメリットを理解し、自分の希望に合った対策を実行していくためにやはりそのくらいの年齢のときからが相応だと思います。。

 

 そうは言っても、元気なうちは生前対策など考えられないあるいは考えたくもないと思うのが普通だと思います。また、子供の方からしても親に生前対策を始めてくれとはなかなか頼みづらいというのが正直なところでしょう。

 多くの人は対策の必要性は理解しながらも実行には移さないのです。
実際、生前対策で最もポピュラーである「遺言」でさえ、遺しているのはおよそ10人に1人と言われています。

 

 なせでしょうか?それは今までの生前対策が「亡くなった後」のことを対象としているからです。例えば、

①亡くなった後の遺産分割で揉めないように遺言を遺しておく、
②亡くなった後の相続税ために生命保険や不動産を活用して節税を行うなど、

 自分がいなくなることを前提にした話ですので、あまりいい気はしないでしょうし、積極的に対策しようというということにならないでしょう。
これこそが生前対策が進まない一番大きな理由だと思います。

 

 

財産管理契約

 残念ながら、ご本人様が認知症になってしまったり、病院に通院する毎日となってしまうと、

親族同士(推定相続人)であっても、特定の人に財産を任せておくのが、不安だという方は、財産管理契約と任意後見契約を活用して、しっかりと財産を管理させていただくことが可能です。

 

これによって、ご自身に代わって財産の管理を行ってもらう人を決めることが出来ます。 

財産管理契約が、成年後見制度や任意後見制度と違うところは、契約の締結後に、 すぐに効力が発揮されるところにあります。

 

※成年後見や任意後見は、契約者の意思能力の低下が条件となります。

 

 財産管理契約は、民法の委任契約に基づく契約ですので、老人ホームや介護施設 への入所するものの、判断能力(意思能力)はハッキリしているので、成年後見制度は使えない場合などに適用されます。

 

 

生前事務委任契約(財産管理契約)のメリット

1. 寝たきりなどの身体の機能低下時に事務手続きを代行してもらえます

成年後見制度は、精神上の障害による判断能力の低下が前提となりますので、
判断能力に問題のない寝たきりのような状態では制度を利用できません。
委任契約はそのような場合の必要な手続きの代行を契約することができます。

2. 手続のたびに委任状を作らないで済みます
委任契約書は、身体が不自由になった際の財産管理や、日常の事務処理を、受任者に代理してもらうための包括的な委任状となります。
委任契約書があれば、金融機関や役所などの手続き時に必要となる委任状を、その都度(*)作成する手間がいりません。
*原則はその都度作成する手間がいりませんが、金融機関によっては個別委任状が必要な場合があります。
また、目や手が不自由で委任状が作れない場合も有効です。

3.受任者が金銭的な管理を行う際に、委任を受けていることを周りに証明できます
他人の財産にからむ管理は、特にデリケートなものです。
たとえば、子供のうちの一人が受任者となり親の財産管理を任された場合、
口約束ではなく、委任契約があれば、堂々と管理事務をこなすことができます。

4. 親族や第三者が、財産を勝手に処分することを防止できる
財産管理に必要な書類を受任者に預けておけば、他の者に勝手に財産を処分される心配がありません。

 

 財産管理契約の内容は、双方の合意にもとづいて決められます。 

例えば、任意後見契約と同じような預貯金の管理や年金の受領、公共料金の支払いなど一般的な 財産管理から、老人ホームに入居している方に代わって月々の支払いを代行することや、 定期的にお小遣いの受け渡しを行う事、毎月の記帳を本人や本人の子供に連絡することなど個別契約のなかで自由に決めることが可能です。

 しかしながら、認知症など判断能力が低下しているばあいには契約を結ぶことは出来ません。

生前事務委任契約の手続上のポイント

1. 「生前事務委任契約」は公正証書で!

「生前事務委任契約」は、大切な財産の管理や生活していく上での重要な手続きを他者に代理権を与え、委任するものです。
「生前事務委任契約書」は、「遺言書」、「任意後見契約書」とともに公正証書で作成されることをお勧めします。

2.委任契約の内容は代理権目録で明確にできます!

委任契約書を作成する際には、「代理権目録」で委任する内容を限定し、権限の範囲を制限することができます。
特に財産を“処分する行為”、たとえば「預貯金を解約して、株式などの金融商品に投資する」 「勝手に不動産を売却してしまう」 「農地の地目を宅地に変更する」など、財産の変動を直接生じさせる行為や、財産の現状または性質を変えてしまう行為は委任契約には盛り込まないようにします。
そういった財産の処分をともなう重要な権限の委任は、その都度個別な委任状を作成し、意思表示するようにしてください。
委任内容は委任者のご都合に合わせて、お願いしたいことだけを、具体的に決めておくことがポイントです。

3. 印鑑や通帳は必要なときに預けましょう!
どんなに信用している相手であっても、トラブルを回避するためにも、受任者に預けたままにしないよう心がける必要があります。

4.本当に信頼できる方を選びましょう!

委任する相手(受任者)は、同居またはお近くのご親族でも構いませんし、ご友人・知人でも結構です。
ただ、信頼できるというだけではなく、依頼された事務処理を問題なくこなせる能力と時間的余裕も必要です。
もし、お心当たりが無いようでしたら、専門家(弁護士、行政書士など)に相談されることをお勧めします。

5. 報酬も決めておきましょう!

ご家族に委任する場合は、無報酬で受任してくれることも多いと思います。
第三者に委任する場合は、受任者と委任契約の内容と報酬額を事前に打ち合わせする必要があります。

6. 記録・報告をしてもらいましょう!

委任契約書を作成したあと、任せきりにするのではなく、定期的に記録の提示や報告を受けるようにしてください。
ご家族などに委任してなあなあで済ませていると、後々トラブルの原因となります。
また、受任者にとっても、自分の行っている事務処理の記録を残し、報告をして行くことは、周囲に対して、「きちんと委任事務を遂行している」ということを証明することにもなるのです。