2019/9/27

離婚と介護-“夫婦崩壊”の危機

介護と離婚

<ポイント>

1.晩婚の長男妻が直面した“夫婦崩壊”の危機

2.夫の親の面倒だれがみる?

3.義母が突然倒れたことをきっかけに、明らかになった義弟嫁の本心、夫の懇願……

 これは、今後多く起こることだろうと思います。そこで、何がこれから問題なのか、法律的な解決ではなく、家族内という感情・心理的な要因が先行することであり、法的な対応に至ることは、次の段階によるものでしょう。

 しかし、テーマでも上げました「介護と離婚」というテーマは、これからの晩婚化が進んでいる日本の家庭のなかで晩婚で結婚した女性にとっては参考になるものと思われます。

 なお、円満な離婚で新しい人生を目指す女性を応援します。離婚のことを少しでも過っている方は、離婚に関する法的処理をご覧ください。

<離婚に関する法的処理>

1.離婚・離縁ー1.協議離婚届不受理申出書

2.離婚・離縁ー2.協議離婚申入書

3. 離婚・離縁-3.離婚に基づく財産分与請求書

詳細は参考記事をご覧ください。

<参考記事> 

実録・夫の親の面倒だれがみる? 晩婚の長男妻が直面した“夫婦崩壊”の危機
2019.09.15
https://hint-pot.jp/archives/15011
著者:Hint-Pot編集部

タグ: 介護, 敬老の日

9月16日は敬老の日。高齢の方々を敬い、長寿を祝う日とされています。このほど厚労省が発表した「2018年の日本人の平均寿命」は女性が87.32歳、男性が81.25歳で、いずれも過去最高。健やかに年齢を重ねていきたいものですが、なにかと不安に思うことも。自らの「老後」はもちろん、中年期に直面することが多いのが「親の介護」。少子化や女性の社会進出などライフスタイルが多様化する今、義母が突然倒れたことをきっかけに、明らかになった義弟嫁の本心、夫の懇願……。「近い将来をしっかりと見据えなくては」と感じたという40代女性の話を聞きました。

 ◇ ◇ ◇

援助も度々受けてきた義弟夫婦は義両親との関係も良好

 松木由美さん(48歳・仮名)は、現在の夫と結婚10年目。子どもはいません。大学を卒業後、新卒で入社した会社でずっと働いています。いわゆる“キャリアウーマン”。責任あるプロジェクトを任されるなど、日々バリバリと仕事をこなしてきました。

 由美さんにはお兄さんがいるため、高齢となった自分の両親の面倒は兄夫婦が中心となってみてくれているのだそう。兄夫婦が出かける際などに顔を出したり、時折病院に付き添う程度で、バランスよくお付き合いを続けていると言います。

 一方、由美さんの夫・健一さんは長男。夫の弟は20代で結婚し、ふたりの子どもがいます。夫の弟夫婦は、若いころからマンション購入や子どもの教育費などを含め、なにかと義両親から援助を受けてきたと聞いています。また、義弟の嫁はひとり娘のため、実家の両親の具合が芳しくない場合は、まだ小さな子ども達を義母に預けることもしばしばあったのだとか。

 義母と弟嫁の仲は、晩婚だった由美さんに比べると付き合いの期間も長く、良好。弟夫婦の自宅も義実家の近くにあり、互いの家を行き来しているので、義両親に何かあれば夫の弟夫婦が中心となって面倒を見てくれるものだと思っていました。

義母の急病で生活が一変 週末は義実家通いの日々に

 平穏な日々が崩れ去ったのは突然のことでした。義母が家の中で倒れ、救急搬送されたのです。原因は脳出血。搬送が早かったため大事には至らなかったのですが、利き手の右手に後遺症が残ってしまいました。

 まず、問題となったのが、義母が入院中の義父の身の回りの世話です。昔気質の義父は、何ひとつ自分で家事をすることはできず、かろうじて近くのスーパーに総菜を買いに行けるレベル。その時は、専業主婦の弟嫁が平日に2回顔を出し、週末は由美さん夫婦が泊まって、家事をすることで事なきを得ました。

 問題は、義母が退院してきてからでした。比較的軽いマヒだったとはいえ、まだまだその症状に慣れていない義母。自分の身の回りの世話すら人任せの義父は、頼りにはなりません。またリハビリのために通院をしなければならず、不自由な体ではひとりで病院に行くこともままならなかったそうです。

 それでもどうにか今まで通りふたり暮らしを続けてもらおうとしていた矢先、事件が起きました。義母がトイレに間に合わず、家の中で粗相をしてしまったのです。入院で体力が落ちていた義母は、服を着替え、風呂に入り、掃除をするという一連の作業を行うことができず、義父が弟嫁に助けを求めて電話をしたのですが繋がらず。結局、仕事中の由美さん夫婦にヘルプの連絡が来ました。

「あの日を境に潮目が変わりましたね。義両親から泣きながら電話が来て、夫の気持ちが同居に大きく傾いてしまったようなんです。この一件で、義両親もふたりで暮らしていく自信がなくなってしまったそうなんです」

「次男の嫁ですし」 介護を拒否する義弟夫婦

 由美さん夫婦は義実家に駆けつけたその足で義弟夫婦の元へ寄り、話し合いが開かれました。由美さんは、健康な義父を徐々に自立させ、散々世話になってきた弟夫婦が中心となって義母の面倒をみていくべきだと考えていました。もちろん由美さん夫婦も週末など、できる範囲で手を貸すつもりだったといいます。しかし、弟嫁が頑としてその提案を承諾しなかったそうです。

「弟嫁の言い分は、子どもが大学受験のため、塾の送り迎えなど徹底してサポートしてあげたいから、今よりも義実家に行く頻度を減らしたいということでした。そして、私達が賃貸の家に暮らしていること、長男であることなどを挙げ、『お義兄さん夫婦が同居すべきだ』と言い出しました。しかも『私は次男の嫁ですし』とも言ってしましたね。今までそういうことを口にしてきたことがなかったので、私にとって義弟嫁がそう思っていたこと自体、衝撃的でした」

 今さら「長男の嫁」とか「次男の嫁」って……モヤモヤとした思いを由美さんは抑えつつ冷静に対応するも、その日の話し合いは平行線のまま。しかし、決まらないからと言って義両親を放置することはできないため、その日は夫の健一さんが義実家に泊まり、由美さんは自宅に帰ることになりました。

 その後は、なし崩し的に健一さんが実家に泊まり込み、仕事を調整しつつ義両親の面倒をみることに。由美さんは、週末になると義実家へ行き、家事をこなすなど休まらない日々が続いたそうです。

実家に泊まり込む夫から涙の電話「仕事を辞めてこっちに来て欲しい」

 そんな生活を始めて2か月が経ったある夜、健一さんから電話がかかってきました。

「夫に泣きながら『仕事を辞めてこっちに来てほしい』って言われたんです。はあ? という感じでした。なんで弟夫婦には任せずにひとりで背負い込んでるの!? とか、私が仕事を辞めたら、私達自身の老後の資金はどうするの!? とか。そもそも私は仕事を辞めたくないのに、なぜ夫は私の気持ちを考えてくれないのか、仕事を続けるには離婚するしかないのか、とか。一瞬で色々なことが頭をぐるぐるしました」

 とりあえず、泣いている夫になにを言っても無駄と判断した由美さんは、ぶちまけたい言葉をぐっと抑えて「考えておく」とだけ言って電話を切り、すぐに義弟夫婦の家に電話をかけました。すると、義弟夫婦の下の娘が電話に出たそうです。

「義弟夫婦はあいにく留守で、とりあえず下の子に現状を伝えました。子どもに言う話ではないと思ったのですが、その時の私には、心の余裕がなかったんだと思います。正直、泣きながら電話してきた夫も、それを受けた私も崩壊寸前だったのかもしれません」

 電話を切った後、少し冷静になってみて「言うべきじゃなかった」と後悔したという由美さん。しかし、この一本の電話がきっかけで事態は大きく変わることに。

おばあちゃんっ子の姪が救世主に! 事態は一時収束……

 事情を知った下の子が、介護を手伝いに近所にある義実家に通うようになったそうです。孫が手伝いに来てくれてるとなったら義母も早く元気にならねばと一念発起。病気をしてから暗い表情が続いていた義母は一気に明るくなりました。そして、義父も孫に家事をやらせるわけにもいかず、自立に向けて前向きになっていったそうです。

 そして、子どもが通っている手前、義弟嫁も無視することはできず、また徐々に手伝いを再開していったのだとか。

「姪は小さい頃から義母によく預けられていたのでおばあちゃん子。だから、放っておくことができなかったのでしょう。あの時事情を話したことに他意はなかったのですが、結果的に良い方向に向かってよかったです」

 軽度だった義母のマヒは徐々に回復していき、以前ほどとはいきませんが、家事もできるようになっていったそう。そして、義父も家事スキルがアップし、ふたりでなんとか助け合いながら生活ができるようになっていったそうです。

「正直、義母がいつ倒れるかわからないし、義父も高齢なので、今の状態は根本的な解決にはなっていないと感じています。でも、少しだけ猶予がもらえたと思って、兄弟夫婦でちゃんと話し合いを続けていきたいと思っていま」

 幸い、義弟の嫁ともギクシャクせず、交流ができているという由美さん。しかし、またなにか事情が変わったら、モヤモヤしそうなリスクは潜んでいそうと言います。それは夫との関係も然り。だからこそ、しっかりと近い将来を見据え、ちゃんとコミュニケーションをとっていきたいという由美さん。

 自分達の老後も考えつつ、親の面倒をみる必要が出てくる中年世代。なるべくひとりで抱え込まず、色々な人に話を聞いてもらうことで、新たな道が開けていくのかもしれません。9月16日は敬老の日。夫の実家に行くという由美さんは、義弟の家族と義両親を囲みながら一緒に食事をする予定だといいます。

 出典:内閣府「平成30年版高齢社会白書 要介護者等からみた主な介護者の続柄」