2019/10/2

夫の認知症で息子家族と疎遠

*夫の認知症で息子家族と疎遠

<ポイント>

1.近くに息子家族が住んでいるのですが、2年前に夫が認知症と診断されてから家に寄り付かなくなりました

2.せめて孫だけでも顔を見せてほしいと思うのですが「忙しい」と言うばかりで

 認知症の症状は、個々人で相当な違いがあるように思います。

詳細な認知症の症状から判断することは、とても難しいかもしれません。しかし、私も先日某認知症施設の話を聞きました。

それは、施設の入所後は、家族の定期的な来所は、1~2人ですと言われていました。

施設に入所後において、そうなのですから施設前はもっと認知症患者とのふれあいがあるのではないかと思いがちです。

 実際、認知症患者とのふれあいと行政やNPO団体などが盛んに喧伝します。また某新聞では認知症の重要な判断をする長谷川式スケールの創始者が認知症患者になったこと、また認知症患者の視点から、認知症に関する表面的な主張をしておられます。

 そのような現状の取り組みにおいて、認知症ケアが注目を浴びています。しかし、認知症患者の現状を追っていくと、その方の人生の一つ一つが失われているように思えます。

 私も、本ホームページにおいて「認知症と生前対策」という法的対応について記載していますが、その記載をする前に重度の認知症患者の施設で、認知症とはどういうものかを1か月間実体験しました。 実体験は、認知症ケアとは何だろうと思わせるものでした。しかし、それが現状なのです。もし、ご興味があるならば、実体験されることをお勧めします。

 少しでもお分かり頂けたらと思っておりますが、認知症患者に対するふれあいは、本当に複雑だと思います。認知症患者のもっとも悲しいことは、最も最愛な配偶者、家族、などの記憶が失くなっていくことなのです。他人が一時的にふれあい、自分の思い入れで(多分優しい方々だと思いますが)認知症を理解しようとする。しかし、最愛の家族はどうなのですか。精神的に自分の人生での最重要な関わりであった認知症患者に対して平然としておられるでしょうか。ご家族が強い覚悟と信頼をもって、関わりを継続できるかどうかではないでしょうか。

 認知症患者を分かってあげてください、などと戦後日本人が誰にでも博愛主義的に可哀そうだなどという欺瞞は取り払っていくべきでしょう。認知症患者は、ご自分の世界で、ご自分の行動を為さっているのです。もうわれわれとは、異なっているのです。それが現状でしょう。

 早く、治療薬が見つかってほしいと思います。

詳細は参考記事をご覧ください。

<参考記事>

夫の認知症で息子家族と疎遠。せめて孫の顔が見たい【お悩み相談室】
構成/中寺暁子 2019.09.27
https://nakamaaru.asahi.com/article/12699240
Q.認知症の夫(80歳)と二人暮らしです。近くに息子家族が住んでいるのですが、2年前に夫が認知症と診断されてから家に寄り付かなくなりました。息子家族にはこれまで金銭面での援助もしてきましたし、少しは介護の手伝いをしてほしいです。せめて孫だけでも顔を見せてほしいと思うのですが「忙しい」と言うばかりで(79歳・女性)

A.息子さんは、自分を育ててくれたかつてのお父さんとは違う姿に、衝撃を受けたのだと思います。家族だからこそ、受け入れられないんですよね。お父さんに対して、こうあってほしいというイメージをお持ちなのかもしれません。受け入れたくない、できることなら見たくないという息子さんの気持ちもよくわかります。

けれども、これから先のことを考えると、息子さんがお父さんの現在の状態を知り、受け入れることは家族としての歩みの一つと捉えなければなりません。相談者は一人で介護をしていて、この先、夫の認知症がさらに進行していくことを考えると不安で仕方ないと思います。介護というのは幅広く、重いものです。まずはケアマネジャーなど専門家に、家族がどんな介護を担っていかなくてはならないのか、具体的に挙げてもらうのがいいと思います。その中で、息子さん家族に介護のどの部分を手伝ってほしいのか、できるだけ具体的に伝えることをおすすめします。息子さん家族も、介護を手伝いたくても何をしたらいいのかわからないのかもしれません。

「せめて孫だけでも顔を見せてほしい」というのは、切実ですね。僕もそう思います。認知症の人が小さい子どもに会うことは行動心理症状(BPSD)の軽減につながるというのが、実感としてあります。認知症がどんなに進行しても、小さいものを守らなければならないという感覚は保たれているように思います。お孫さんとの面会がお父さんのためになることを、ぜひ息子さんに伝えてください。


息子さんと同じように、お孫さんも以前とは違うおじいさんの姿にショックを受けるかもしれないという心配もあるかもしれませんが、その点は安心してください。子どもは大人よりも状況を受け入れる柔軟さがあります。例えば大人は認知症の人がおかしな言動をしても、相手への配慮から「おかしい」とは言いませんよね。でも子どもは率直におかしいと言える感性があり、それが場の笑いにつながることもあります。子どもがいると自然と笑顔があふれる瞬間が訪れるんですよね。場が寛容な雰囲気に包まれて、何もかも許されるような……。お孫さんがいるということは、家族の関係を取り戻すチャンスなんです。

お父さんの人生の最終ステージに、家族としてどう寄り添うのか。認知症になったことをきっかけに、それぞれが考えられるといいですね。

【まとめ】息子家族に介護を手伝ってもらうには?
息子にお父さんの現在の状態を理解してもらう
家族が担う介護の内容を専門家とともに具体化する
お孫さんとの面会がお父さんのためになることを、息子に伝える